佐藤康行インタビュー

無題(1)

 

心の病について解説する佐藤氏(左)、竹本医師(右)。ビジネスフラッシュ(千葉テレビ)

ストレスチェックの施行から約3ヶ月が経過しました。企業はもとよりビジネスパーソンにも関心の広がりを見せています。

今回は、うつ病専門クリニック「YSこころのクリニック」、「心の学校・アイジーエー」の設立者である佐藤康行氏に、メンタルヘルス対策のポイントについて伺いました。

●心の病は説明が難しい

—ストレスチェックが高い関心を集めているようです。

佐藤康行(以下、佐藤) 心の病ほど判定が難しい疾患はありません。現在、精神疾患を患い病院に行くと、精神科、神経科、心療内科などの門を叩くことになります。ここでまず医師が最初にすることは問診です。

精神疾患の主な治療方法は、薬物療法と認知行動療法に代表される心理療法です。簡単に言うと、薬の服用、カウンセリングなどの心の回復プログラムで考え方を変えて行動を変えていくものですが、確立されたものとはいえません。精神疾患は心の病です。心の病という見えないものに対して、原因そのものに着目して手をつけることが大切です。

クリニック院長の竹本好成氏(医学博士、産業医)は「心の問題は現代医療のなかでも研究が遅れている分野です。ある種の病気の原因を脳内物質の変化で説明される方が多いですが、それが原因かは分かりません。脳科学は近年素晴らしく発達してきてるとはいえ、心の問題まで全てを説明できるかというと疑問に思います。」と述べています。まだ解明しなければいけないことが多い領域なのです。

—メンタルが疲れると行動が阻害されるのは何故でしょうか?

佐藤 うつ病の主な原因は人間関係です。いまここにストーブがあり火傷をしたとします。すると脳はストーブに近づくと危険と判断するようになります。それ以来、ストーブには注意するようになるはずです。うつ病の人にとってはストーブが人間関係だと思ってください。ストーブで火傷をするのは嫌だと思い人間関係から遠ざかるのです。

しかし職場にいれば人間関係から逃れることはできません。そして輪に入りにくくなることで、うつや引きこもりを発症させます。ところが、ストーブはいつも熱いとは限りません。正しく利用していれば火傷をすることはありませんが、脳は被害妄想的にとらえてしまいます。

自分が黄色いレンズのサングラスをしていたら全ての景色が黄色というフィルターを通して見ることになります。そして黄色のフィルターはこのままにしておいたらドンドン色が濃くなります。この黄色のフィルターは真っ直ぐからのズレであり自分で作り上げたバリアです。このバリアを外さなければ症状から開放されません。

精神疾患は「人の意識の構造」という観点からとらえていったときに適切な処方ができます。多くの人が‘心の問題’に関心を向けるようになれば働く環境はもっと改善していくはずです。

●人間関係に悩んでいる人は多い

—会社なかで人間関係にストレスを抱えている人は多いと思います。

佐藤 会社とはそもそも理不尽なものです。特に人間関係での衝突は難しく、禍根を残すことが少なくありません。そのうち、対応するのも面倒になってしまい相手と向き合うことを避けてしまいます。

このようなケースを考えてみてください。上司から注意されたとき、ほとんどの部下は「すみません」と謝罪をするはずです。すると上司は不愉快になりかねません。上司が注意している場合の多くは謝罪を求めているわけではないからです。

上司としては、注意をしていることの真実を部下が理解をして意見や改善策の話ができることを待っているのです。そのため上司の注意の真意をつかんで理解を伝えて、自分が学んだことを表明しなければいけません。

「部長はこのことが言いたかったのですね。有難うございます」
「勉強になりました。言っていただかなければ気がつきませんでした」

上司は、部下を責めるために仕事をしているわけではありません。無理難題であっても、そのベースには「仕事への熱い思い」があるのかも知れない。そこが共有できるなら衝突は避けられるはずです。

「同じ会社なのだからもっと良いサービスを多くの人に提供しよう」
「もっと業績を上げるように頑張ろう」

このように切り替えられるはずです。上司に限らず、コンフリクトや衝突の危機を感じたら、相手のベースとなっている思いに焦点を合わせることで気持ちが理解できるようになるものです。

—ありがとうございました。

この機会にご自身のメンタルに関心を向けては如何でしょうか。新しい気づきが発見できるかも知れません。

尾藤克之
コラムニスト

 

 

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