遺品

佐藤学長、いつもありがとうございます。

 

 

今から15年ほど前に勤務していた小学校で、中村君という少年がいました。

 

あまり身長は高くなく、目がクリクリして色白で、ちょっぴりポチャッとした感じの少年だったように記憶しています。

 

中村君は特攻機が大好きで、将来「航空自衛隊に入りたい」という夢の持ち主でした。

 

毎日、毎日、来る日も来る日も特攻機と戦争で亡くなったおじぃちゃんの話をする生徒さんでした。

 

特攻機と航空自衛隊の話をする時の、中村少年の目はキラキラと輝き、魅力を語らせたらナンバーワンでした。

 

 

そんなある日、後ろから突然「バフっ」と頭に何かを突然被せられたのです!!

 

 

その瞬間「わー、似合ってるーーー」と中村少年の声が聞こえました。

 

 

な、なんだ?

 

 

被せられたものを取ろうとしましたが、上から押さえつけられていてなかなか脱ぐことが出来ませんでした。

 

 

「似合ってるーーー」

 

「やめてーーー」

 

「似合ってるーーー」

 

「やめてー――」

 

というやり取りの後、ようやく脱いだそのものは

 

なんとおじぃちゃんの形見

 

 

それは、特攻に行った事のあるおじいちゃんの特攻用の帽子だったんです!!

 

な、なぜに?

 

「あれ?なんか、シミがついてるよ」と言うと

 

「あ、それおじぃちゃんの戦争の時についた血!」とさらりと言われました。

 

戦争にはその頃から実は縁があったんですね。

 

桃花さんの話を書いていて、ふと思い出したので書いてみました。

 

 

ああなりたい、こうなりたいという自分の願望ではなく、踏み込んでその結果を受け入れていく。(佐藤康行)

 

 

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